ツナとササミ

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舞姫 (テレプシコーラ)第一部を読んだ

  • 投稿日:2007-09-17 04:53:56
  • カテゴリー:読書


山岸涼子先生のマンガは、有名な作品のタイトルだけはいくつか知っていましたが、実際に読むのは初めてでした。そして、なにげにバレエマンガというジャンルに挑戦するのも初めてでした。「シューズに画鋲を入れる」という世界観だけは、いろんなギャグマンガでモチーフとして使われていたのをみていたので、とりあえずそんな先入観を持ちながら読み進めたのですが、さすがにギャグでは済まされませんでした。すごい説得力のある描写が淡々と連なっていき、ものすごい破壊力を持っていました。もちろん破壊されたのは、私の中に漠然とあったバレエマンガのイメージです。

序盤は空美ちゃんから目が離せません。「すごいよ!マサルさん」のキャシャリン君さながらの容姿で、鬼気迫る感じでバレエの練習をしている様子がインパクト強すぎて目が潰れるかと思いました。「お仕事」の描写とかも目をそらしたくなるような内容ですが、確実に「空美ちゃん」のキャラクター形成の一要素になっています。学校では超然とした態度で、クラス内でも浮いてしまっていますが、彼女の心理描写からうかがえるのは、結構まともな性格です。凄惨な環境で、生き方が不器用になってしまったようですが。

中盤は六花ちゃんを応援してました。それこそ自分の孫のように。本来は弱虫でネガティブなキャラクターには、あんまり興味が湧かないのですが、この主人公がこのマンガの中で一番笑っているんですよね。シリアスな展開が続く中でもこの子ののんきなところが結構救いになります。いてくれてありがとう、と感謝したいです。

終盤は、ある種のフラグの立った千花ちゃんが、物語の中での役割を果たすまでものすごいドキドキしました。いつ頃ですかね、千花ちゃんの役割に気付くのって。おそらく六花ちゃんの成長のために最初から用意されていたキャラクターなんだと思いますが、最初は「生涯のライバル」として主人公の眼前に立ちはだかり続けるだけ、ぐらいに思ってました。それがまさか「目覚めのきっかけ」になる重要なイベントだったとは。

兄弟では自分が一番上なせいか、兄弟姉妹の出てくるマンガでは、目線が兄や姉にいきがちなのですが、このマンガでは、六花ちゃんをメインに読んでいたので、助かりました。ちびまるこちゃんでは、断然、お姉ちゃん派ですよ、私は。いつもまるこの馬鹿さ加減に呆れながら巻き込まれていくという視聴スタンスです。でも、今回は千花ちゃんになって読んでいなくてよかったです。心が潰れてしまうところでした。
そもそも、千花ちゃんは六花ちゃんに比べて心理描写が少ないんですよね。主人公は六花ちゃんなので、当たり前といえば当たり前ですが、千花ちゃんは何でも自分でできてしまうので、自己完結してしまい、内心を明かさないというキャラクターでした。それで、中盤には六花ちゃんメインの展開に読者としてうまくリードされていたんですよね。
それが、後半、千花ちゃんの不安が徐々に描写を増やしていき、あぁ、これはヤバいと警告を発しつつ、おばあちゃんのお見舞いシーンでホッと一息ついた読者をズドーンと・・・いや、読んでない人にはさっぱりですね。要するに、第一部の最終巻で、作者にしてやられたのです。この振り回しぶりは、衝撃大でした。

あと、ひとみちゃんが全般的にすごいです。波乱万丈ぶりが上記3人ほどの振れ幅はないにしろ、全編通して波打ちっぱなしです。なんとも憎めないキャラクターです。

今年の秋頃から始まるとかいう第二部が待たれます。
スカッと楽しいマンガではありませんが、興味があったらどうぞ。

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